フェズの迷路を味わえず <9日目>早朝、グランタクシーでワルザザートへ向かった。この日はなるべくフェズに近い所まで行こうと思っていたので(フェズまで行くことが出来れば最高だが)、ワルザザート行きのグランタクシーに乗り込むというのは予定通りの行動だった。 しかし、予定通りではあったが、かなり早目にザゴラを出た。 実はザゴラのホテルでバックパックを開いたとき、1987年の夏から愛用しているマグカップをワルザザートのホテルに忘れてきたことに気づき、それを取りに戻るため、かなり早目にザゴラを出たのだ。 たかがマグカップだが、中国、ギリシャ、トルコ、エジプト、ヨルダン、シリアを旅した際、常にともにあった旅の道具なのだ。大げさだと言われそうだが、けっこうショックは大きかった。 ワルザザートに到着し、大急ぎでホテルに行きレセプションで尋ねたが、マグカップはないという。 レセプション氏いわく、「客の忘れ物はきちんと保管しておくことになっている」 イスラム圏ではこういうところはけっこうしっかりしているという印象なので、レセプション氏のいうことは信じることができた(一応部屋も見せてもらったのだったろうか?)。 おそらく、部屋の掃除に入った人が忘れものではなく部屋の備品だと勘違いし(備品が統一されているようなレベルのホテルではないから)、前の晩泊った客が持って行ったのだろうと思う(ことにした)。
ワルザザートで朝昼兼用の食事をとった後、エルラシディア行きのバスに乗車。
夕方、エルラシディアに到着。 この日はエルラシディア泊。 <10日目> バスでフェズに移動。 メモには時刻の記述がないので詳しくはわからないが、午前中にエルラシディアを出て、夕方フェズに到着したようだ。 バスターミナルからプチタクシーで新市街に移動して、ホテルを確保。 <11日目> 「世界一複雑な迷路の町」、フェズ・エル・バリ。 8世紀末にムーレイ・イドリス1世がフェズの地にイスラム王朝を興し、9世紀初め、ムーレイ・イドリス2世がフェズ川の西岸に新都を建設したが、それがフェズ・エル・バリである。 迷子上等という意気込みでこの町にやってきたわけだが、ここはマラケシュと並ぶ”いんちきガイド”の巣窟。新市街から歩いて行ったのだが、メディナの入口であるブー・ジュルード門をくぐったあたりで、たちまち自称学生(本物の学生という可能性はある)につかまってしまった。「お金はいらない」「ガイドがついていると、他の連中は近寄って来ないから安心」と言いながら、まとわりついて離れない。「お金はいらない」というのは、ほぼ嘘なのはわかっている。ものすごくうっとおしいが、誰か一人モロッコ人がついていると、それ以上、誰かにつきまとわれることがないというのも確かである。ということで、不本意だったが、自称学生の彼と一緒に歩くことにした。
公認ガイドではないこともあって、超有名な場所のみを案内されたという感じで、あっと言う間にフェズ・エル・バリを抜けてしまった。 そして、自称学生の彼「俺にお金をあげたくなっただろう?」とのたまう。しかし、やはり現金を渡すのは癪に障るので、道端で外国製のタバコをひとつ買って、それを渡して別れた。不満げな表情も見せなかったと思うので、まあまあ良心的な”いんちきガイド”だったのかもしれない。 しかし、フェズの迷路を味わうことができず消化不良であった。お金をけちらず、公認ガイドを雇って歩くということも考えるべきだったかもしれない。 |