偽海外協力隊員になる


パルミラから乗ったダマスカス行きのバスは、座席が2列1列、革張りの豪華ばすだった。こんなバスが走るようになったんだシリアも。これが正直な感想だった。そういえば、かつて幹線路線の中心だった国営カルナックバスはどうなったのだろうか。この旅ではついぞお目にかかれなかった、成田や羽田のリムジンバスとそっくりなデザインのその姿は。

さて、ダマスカスから先はどうするか。(1)ダマスカスで一泊してアンマンへ抜ける。しかし、これだとアンマンは泊るだけになる。(2)ダマスカスはスキップして一気にアンマンへ移動する。ダマスカスの旧市街を歩けないのは残念だが、何度も歩いているからと自分を納得させて、アンマンから日帰りでどこか未訪問の観光地へ行けるという利点がある。

結局、選択したのは(2)。パルミラで早めのバスに乗ることができたので、明るいうちにアンマンに着けそうだし。

パルミラを9時半に出たバスは、11時少し前、ダマスカスとバグダッドの分岐点を通過。12時10分すぎダマスカス到着。

ここから、アンマン方面への乗合タクシの出るガラージュ・ソマリエ(ガラージュはバスターミナルのこと)まで移動だ。ダマスカスのバスターミナルなども、以前来たときとは大きく様変わりしていて、市の中心部にあった、アンマンはベイルートへ行く乗合タクシーステーションもバスステーションと一緒の郊外へ移ってしまった。市内の渋滞を避けるためなのだろうが、不便になってしまったものだ。

バスを降るとすぐにタクシーの客引きが来て、ガラージュ・ソマリエまでは「500ポンド(約12ドル)」という。遠いから高いのだと言いたいようだが、でも高い。そこで、バスをさがす。例によって言葉は通じないが、市内バスの係りと思われるおじさんに「ガラージュ・ソマリエ」と話しかけると(これだけでガラージュ・ソマリエへ行きたいのだけれどということは通じる)、バスを指さして教えてくれた。

念のために乗車の際も「ガラージュ・ソマリエ?」と運転手に声をかける。

ガラージュ・ソマリエは遠く、30分を要した。タクシーの運ちゃんの言い値の500ポンドも滅茶苦茶高いというわけではなかったようだ。ちなみにバスの運賃は10ポンド。

ダマスカスを13時半ころ出発して、16時50分ころアンマンのアブダリに到着。最初のヨルダン訪問からずっと泊っているホテル・キャラバンで部屋を確保し、ダウンタウンまで夕食を食べに出た。かなりの距離があるが、僕にとっては懐かしい道だ。アンマンの空気を味わいながら、坂道を下った。



アンマンのアブダリ。かつてはここにもバスターミナルがあって、アンマン近郊へのバスが出ていたが移動してしまった。しかし、アンマン-ダマスカス間の乗合タクシーの会社はこの界隈にあり、客待ちの乗合タクシーが数多く駐車しており、横を通りすぎるたびに「ダマスカス?}と声をかけられた。




これもアブダリ地区。奥に見えるモスクは、キング・アブドゥッラー・モスク。一度に3000人が礼拝できるという巨大モスク。


さて、ヨルダンで確保した一日をどう使うか。行こうと思えばぺトラへも行けるが、今回は行ったことのない場所へ行くことにした。候補はサルトとウンム・カイス。サルトはオスマン朝時代に栄えた街で、当時の街並みが残っているという。一方、ウム・カイスはローマ時代にデカポリスの一員として栄えた都市でゴラン高原を見渡せる立地。結局は、『歩き方』に乗っていた黄色い花が咲き乱れる遺跡の写真と「春はピクニックに最適」というキャプションにひかれて、ウンム・カイスに決定。

ウンム・カイスへ行くには、まず、イルビットに行かなければならない。まず、シャマーリー・バスステーション(ムジャンマ・シャマーリー)までタクシーで移動して、そこからバスで約1時間半、イルビットに到着。しかし、イルビット、それほど大きな街とも思われないのだが、バスターミナルが目的地別に分かれている。それもかなり離れていて、バスで移動。

ウンム・カイス方面へ行くバスの出るターミナルで、海外協力隊員の人たちと出会った。あちこちで勤務している人たちが、休日を利用してウンム・カイスまで行くとのこと。総勢8名(うち一人は協力隊員と仕事をしているヨルダン人で日本語ペラペラ、かつ本人曰く「ヨルダン人からもハローと声をかけられる」というアラブの人っぽくない人)。それに僕を加えた9人でウンム・カイス観光をすることになった。

イルビットから45分ほどでウンム・カイス到着。遺跡の入り口では当然入場料を払うわけだが、協力隊員の人たちは、身分証明書提示で無料。しかし、一人一人の身分証明書と本人の確認はせず。それを見ていると、協力隊員の一人の方が、「一緒に入場しましょう」と。つまりタダではいりましょうと。自分は、こういうご厚意は簡単に受け入れてしまう人なので、「ありがとうございます」と答える。偽海外協力隊員になったというわけである。そういえば、初めてヨルダンへ来たとき、偽日商岩井社員になって、日商岩井社員料金でホテルに泊まるなんてこともあった。ヨルダンでは「偽何とか」になるめぐりあわせのようだ。





劇場の座席。



花の咲き乱れる遺跡。どうやらベストタイミングの訪問だったよう。



視界がいま一つではっきりは映っていないが、肉眼ではガリラヤ湖をなんとか確認することができた。。







自然の花畑のなかで、協力隊員の皆さんと記念撮影。


遺跡の中にはレストハウスがあり、のどかな景色を眺めながら協力隊員の皆さんと昼食。一人旅だとこういう機会は少ないが、とても楽しい時間をすごさせていただいた。


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