開平で没有(メイヨウ)を連発する
翌朝、9時15分発のバスで開平へ移動。所要時間は約1時間であった。 開平のバスターミナルを出ると、すぐにタクシーの客引きがやってきた。開平のちょう楼(中洋折衷の高層建築)はあちこちに点在しており、バスなどでまわるのはなかなかたいへんということなので、最初からタクシーをチャーターする気でいったが、だいたい、どのあたりに見所があるのか、開平のターミナルからどの程度の距離なのか皆目検討がつかぬ。そんな状態でいきなり言い値で乗るわけにはいかない。 バスターミナル近くの店で、まずは地図を購入。現在地との距離をはかりつつ、バスで行ける可能性がないのかもさぐる。その間、客引きの兄ちゃんはしつこく言い寄ってくる。 「自力村、立園、赤かん欧陸風情街」をまわって、いくら?」 「200元」(約3400円か、高いなあ) 「高い!」 「じゃあ180元」 「高い!(財布の中の中国元を確認して) 140元」 「じゃあ160元」 「いや、140元で。だって、没有銭(めいようちぇん=お金がない)だから」 「たった20元だよ、それくらいいいじゃない」(と兄ちゃん、呆れ顔) 「いや本当に没有銭なんだ」(実際、両替しないとこの先苦しくなりそうだった) ここで「没有」の説明が必要だろう。「没有」とは「ない」という意味の中国語で、昔の中国を知る人ならばわかるだろうが、中国には「没有」の壁というものがあった。鉄道駅の窓口でチケットは「没有」と言われ、ホテルのレセプションで部屋は「没有」といわれ、とにかくあちこちでこの言葉にやられてしまったのだ。社会主義の国中国では、仕事してもしなくても給料は同じだったから、なるべく仕事はしたくない。そこで、面倒なので、客に対して、あるかないか調べることもなく「没有」という言葉を返すことが多かったのである。 その言葉を今僕は中国人相手に連発していると思うと、少しおかしかった。 結局、僕の「没有」攻撃で、140元で妥結。
自力村のあと、立園という完全に博物館化した邸宅跡へ行ったが、ここで問題が発生した。ここの入園料が60元。しかし、僕の手持ちの中国元は170元と少し。ここで60元払うとドライバーに払う中国元がなくなる。入場券売り場で香港ドルを見せて、これは使えないかと尋ねるがだめだという。財布の中身をみた窓口の女性が、「そこにあるじゃない」というジェスチャー。でもこれはドライバーに払う金なんだと、僕もジェスチャーで応じる。そして、「今、没有銭なんだ」とまた「没有」を使う。 見かねた窓口の女性が、何と「30元でいい」といってくれた。まさかの対応であった。
13時20分ころ、開平へ戻り、ドライバーの兄ちゃんに140元を支払う。もうほとんど中国元がない。両替をしなければ昼食もとれないし、次の目的地広州に行くこともできない。 中国での両替は原則中国銀行で、となる。しかし、近くに中国銀行がない。昔の中国ならば遠くても中国銀行へ行かなければならなかったのだが、中国は変わった。その辺の銀行でも両替できるはずだ。ということで、近くの銀行に飛び込んで、両替をお願いしてみた。すると予想通り両替は受け付けてもらえたが、両替ってどうするんだ? という雰囲気ありあり。必要な書類がなかなか見つけられない。それでも15分くらいで両替完了。ここの銀行は優秀であった。 |