
老ウェイターとの再会
その夜、新市街のタキシムまで食事に出た。特にどこの店へ行こうとかいうあてはなかったが、取り敢えず、かつてよく行った中華料理店のあたりへ行ってみた。
僕がトルコに頻繁に行くようになった90年代初めには、それほどお金をかけずに食べられる中華料理店として知られた店だったが、イスタンブールの観光化が一層進み(今では信じがたいことだが、90年代初めはグランドバザールで客引きにあうこともそれほど多くなかった)、外国人向けのレストランが増え、一方でトルコの物価が上がり、そのレストランは、「まずい、量が少ない、高い(実際はものすごく高くはなかったのだが庶民的なトルコ料理店と比べると高かった)」と、悪い3拍子がそろっているようなことが『地球の歩き方』に載ったこともあったように思う。
それでも、毎回とはいわないまでも、イスタンブールを訪れると、その中華料理店へ行った。なぜかというと、そのレストランで働いていた気のいいおじさんに会いたかったからである。英語と片言の日本語・中国語を話し、外国人客とのコミュニケーションを楽しんでいるおじさんは、僕にとっては魅力的だった。
しかし、その場にその店はなく(以前の訪問ですでに閉店したことは確認していたのだが、それを忘れて訪れたのだがそれが思わぬ結果をもたらした)、じゃあ別の店でと思い、移動しようとしたら、近くの中華料理店の窓越しに見覚えのあるあの姿が。。。
あのウェイターのおじさんではないか。店は違うようだが(リニューアルしたのかもしれないとも思った)、確かにあのおじさんである。
僕はすぐにその店の入口を通った。
接客はそのおじさんがしてくれた。料理を持ってきてくれたときに尋ねてみた。
「以前、このあたりにあった中華料理店で働いていましたよね。おじさんのこと覚えてますよ。それで外から姿見えたので入ってきたんです」
「おお、覚えていてくれていたのですか。前の店は5年前に閉店して、ここのホテルから働いてくれといわれて(どうやら隣のホテルが経営しているレストランらしい)、働いているんです」
確かに、英語・日本語・中国語で接客できる彼は有用な人材だ。
もちろんおじさんは僕のことを覚えていたわけでないけれど、僕が「覚えている」と言った瞬間から、さらによいサービスをしてくれた。しかし、そのおじさん、僕がイスタンブールへよく来たころ、すでによい年齢だったと思うから、今ではかなりの高齢のはずだ。いつまでも元気で働いていてほしいものだ。
イスタンブールへ来たらまた来ることを約して、その店をあとにした。

ブルーモスク。 |
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