船旅イスタンブール
香港に九龍と香港島とを結ぶスターフェリーという船がある。ほんの数分の乗船時間なのだが、香港の摩天楼を眺めながらの移動はとても贅沢な時間に感じられる。沢木耕太郎は『深夜特急』で、このスターフェリーのことを”60セントの豪華な航海”と書いた。60セントが日本円でどれぐらいの額だったのかはめんどうなので調べていないが、わずかな額であることは間違いない。なぜ、イスタンブールのことを書いているのに香港のことを書いたのかというと、イスタンブールにも、そんなにお金をかけずに豪華な航海を楽しむことができる航路があり、かなりの回数乗船しているからである。

イスタンブールにおける”豪華な航海”の最たるものはガラタ橋の近くのエミノニュと黒海近くのアナドル・カヴァとを結ぶボスポラス海峡クルーズだろう。これは観光船なので人々の普段の足であるスターフェリーとは性格が異なるが、所用時間は片道1時間半、料金は日本円で片道1000円未満(これは2010年代前半の金額であり現在はまったく異なると思う)、手軽に利用できるという点は変わらない。

ボスポラス海峡クルーズ船には1990年、1993年、1994年、2002年、2015年に乗っており、往復利用したのは2015年のみだと思う。



(2015年10月) ボスポラス海峡クルーズの楽しみは、船から見ることができる歴史的建造物。写真はエミノニュを出てすぐに見られるガラタ塔。




(2015年10月) しばらく進むとドルマバフチェ宮殿(19世紀半ばスルタン、アブデュルメジドが建造した宮殿)が見えてくる。




(2015年10月) ドルマバフチェ宮殿。




(1993年3月) ドルマバフチェ宮殿。宮殿の後方にはまだ背の高い建物が少ない。




(2015年10月) チュラーン・パレス。19世紀に建造されたオスマン帝国の宮殿で、現在はホテルとして使用されている。




(1993年3月) 




オルタキョイ・ジャミイ(19世紀、古いモスクに代えて建造されたバロック様式のモスク)と第1ボスポラス大橋。




ボスポラス海峡沿いには歴史がありそうな豪華な建造物が点在している。




ルメリ・ヒサルと第2ボスポラス大橋(ファーティフ・スルタン・メフメット橋)。




ルメリ・ヒサルの対岸にあるアナドル・ヒサルと瀟洒な建物群。




船の向こうに見えるのは、19世紀半ばに建造されたキュチュクス離宮。海側からアクセスするように作られているということで、裏の道路側は地味な作りなんだそう(行ったことがないので詳細はわかりません)。




(2002年8月) 終点アナドル・カヴァに近づいて行くところ。山の上に見えるのはヨロス城。




(1993年3月) アナドル・カヴァ。エミノニュを10時半ころ出た船は12時ころここに到着。ここで昼食をとり、裏手の城塞(ヨロス城)を見てから15時に出るエミノニュ行きの船で戻るというのが一般的な観光のパターン。





(2002年8月) ヨロス城。




(2002年8月) ヨロス城から黒海の入口方向を望む。現在は、2016年、黒海の入口近くに開通した第3ボスポラス大橋(ヤウズ・スルタン・セリム橋)が見える。




(1993年3月) アナドル・カヴァを出るクルーズ船とは別の定期船(現在運行されているのかどうかは不明)から撮った写真。この後、対岸のサルイェルで下船してバス(ドルムシュだったかも)でルメリ・ヒサルへ向かった。




(2015年10年) キュレリ軍事高校。1845年にオスマン帝国時代に設立され、トルコの軍事教育において重要な役割を果たしてきた。




(2015年10月) ベイレルベイ宮殿。1865年、オスマン様式とバロック様式を折衷して建造された夏の宮殿。




(2015年10月) 中央にみえる塔は乙女の塔(クズ・クレスィ)。 かつては灯台として使用されていたが現在はレストランとして使用されている。



イスタンブールで香港のスターフェリーになぞらえるのにふさわしいのは、ヨーロッパ側とアジア側とを結ぶフェリーだと思う。所用時間はスターフェリーより随分と長く、エミノニュ~ユスキュダル路線が15分くらい、エミノニュ~カドキョイ路線(途中ハイダル・パシャ駅に寄るのだったか?)が30分。トプカプ宮殿とかアヤソフィアとかを船から見られるので気に入っている。(カラキョイ~カドキョイ路線とかスィルケジ~ハレム路線とかもある)



(2015年10月) カドキョイ路線に乗ると、ブルーモスク(スルタン・アフメット・ジャミイ)、アヤソフィア、トプカプ宮殿、ガラタ塔が一直線で見ることができる(上の写真)。




(2011年8月) ユスキュクダラからエミノニュへ向かうフェリーからの薄暮の時間帯の眺め。個人的には気に入っていますが、1分40秒くらいダラダタと続く映像で退屈するかもしれません。(mp4=14Mb)。