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認知症の母親と生活した時間は幸せな時間だった

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少し前のことになるが、ある女性芸能人が語った内容としてネット記事に次のようなことが載せられた。

母親の認知症が進んで以降、母親を抱きしめたり、思い切り甘えたりするようになった。昔はちょっと怖い(威厳のある)母親で自分がそんな態度で母親に接するようになるとは思いもよらなかった、というような内容だったか?(その記事を目にしてから随分経ってしまったので、正確ではないが、そんな感じだったと思う)

今は世の中に認知症の高齢者は沢山おり、認知症の親とその子との関係も色々だと思う。

記事にあるようなある種幸せな関係を持つことができる親子は多いのか少ないのか、それはわからない。

しかし、自分の場合、幸いにも、件の女性芸能人と同様とても良い関係を築けていた。

抱きしめるとか、甘えるとかまではできなかったが、通院の際などの際には足もとがおぼつかない母を支えるため手をつないだり、クリニックの待合室の長椅子ではかなりぴったりふっついて座って順番が来るまで話したり。。。

母がしっかりしていたころならば薄気味悪がられたかもしれないが。

もちろん母はは突然変なことを言い出したり、急に機嫌が悪くなったりすることがなかったわけではない。しかし、それらは概してマイルドなものだった。

思えば、かかりつけ医に恵まれていた。

母はもともと血圧がかなり高い状態で循環器科のクリニックに通っていたのだが、降圧剤などの薬では抑えが効かない状態で、時々、暴走といってもよいほど血圧が高くなることがあった。それで、かかりつけの医師は自律神経というか精神の方の制御が必要ではないかと、知り合いの神経内科の受診を薦めてくれたのだ。

そして、従来通り、血圧を下げる薬、血液をサラサラにする薬、血管を広げる薬を飲みつつ、安定剤を服用し、自分は循環器科の医師のアドバイスを参考にしながらコレステロール値を下げるのによい食事を用意するようにした。

そうすると血圧は安定、降圧剤も少し弱いものに変更できるまでになった。

もともとは血圧の暴走を止めるために飲み始めた安定剤だったが、それが、認知症にともなう精神の不安定からくる諸問題を抑制してくれたように思う。

そのお蔭で、最晩年の母の思い出として心に残っているのは、穏やかでニコニコしている姿ばかりである。

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