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古い旅を振り返るなかで実感する最早先進国とはいえなくなった日本

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現在、1991年のフランスのパリを旅したときの旅行記を本編(ホームページ)にアップしている。

旅のメモには断片的ではあるが、その時の食事の金額が記されている。

パリのたぶんカルチェラタンあたりにあった「本日の定食」みたいなメニューのみで勝負している、豪華ではない(どちらかといえば質素な感じの)レストランでとった定食(前菜・メイン・デザート)の値段が日本円で約1300円。

当時の自分が行ったことがあったのは、中国、エジプト、ヨルダン、シリア、トルコ、ギリシャで、ギリシャ以外の国々はいわゆる途上国で物価も安く、旅での食費もとても安く抑えることができた。また、ギリシャもヨーロッパとしては格安の部類だった。

そんなわけで、旅のメモではフランスの物価の高さを嘆く記述がけっこうあるのだけれど、よく考えると、上述の1300円という定食の値段は、日本でも、この場所(パリの中心部)でこの内容ならば、まあそんなものだろうと納得できる値段だったと思う。

最近ときどき目にするグラフに主要先進国の平均賃金の額の推移と示したものがある。

それを見ると(記憶をもとに書いているのでちょっと不正確かもしれないが)、日本の平均賃金はこの30年間ほとんど横ばい。僕が初めてフランスを歩いた1991年のフランスの平均賃金は日本をわずかに下回る程度だったと思う。

91年当時の平均的日本人と平均的フランス人の購買力はほぼ等しく、それに応じて、それぞれの国の物価もだいたい定まっていたと思うので、上述のレストランでの定食の値段は、節約旅行を志向するものとしては高かったが、東京で暮らしていた僕の感覚に照らし合わせてみると「まあそんなものだろうと納得」するものだったのだ。

そして、現在の日本での感覚である。

この30年間、日本における賃金はほぼ横ばい。また、物価変動もかぎりなく横ばいに近い。

物価が上がらないというのは一見よいことのように見えるが、これは賃金上昇の停滞のなせる業なのである(値上げしたら売れない→価格を抑える→そのためにコストを抑える、つまり労働者の賃金を抑える)。

そんな日本で暮らしていると、上述のパリでの夕食と同レベルの食事ならば、現在パリに行っても1300円くらいでいいんじゃないかという感覚に陥ってしまう。しかし、フランスはその後、経済発展を遂げ、30年前に食べた食事と同レベルの食事をとろうとすると、少なくても2200~2300円くらいは出さないとならないのではないか(もっとか?)。

フランスで2200~2300円くらい出さないと食べられないものを、日本では1300円で食べられる。さすがにフレンチとかだとそんなに安く食べられないだろうが、例えばとんかつ定食とかならば、格安のチェーン店ではなくても1300円でお釣りがくる店があると思う。

これって、昔、自分が日本から発展途上国に出かけて体験したことと同じだと思う。

そうなのだ。欧米先進国から見ると、日本は物価面でみると最早先進国とはいえないのだ。

今「物価面でみると最早先進国とはいえない」と書いたが、日本に残る国際協力というのは、安い賃金、安い円に支えられた競争力だけで、そうした条件をとっぱらっても競争できるものは、あまりないのではないか。つまり、色々な要素を検討してみても、GDPは大きいものの、やはり、最早先進国とよべるようなレベルではないのではないか。旅行記を作成しながら、けっこう暗い気持ちになってしまうのだ。

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