バック・ウォーターを手漕ぎボートで

<3月9日(5日目)>
どうしてもバック・ウォーターの広い運河を船で巡りたくて、コーチンの南約64kmのところにあるアレッピーへ行ってみることにした。『歩き方』にはアレッピーとクイロンを結ぶ8時間のクルーズの情報しか載せられていないが、かなりの観光地らしいから、必ず短い短時間のクルーズを楽しむ手段はあるはずだ。そう思ってローカルバスでエルナクラムを出た。

9時20分ころ出発したバスは10時50分ころアレッピー到着(運賃は36ルピー)。

バスを降りるとさっそくボートの客引きがやってきた。どうやら個人でバックウォーター巡りができそうである。軽く手をふり「いらない」というと、しつこく食い下がることはなかった。実におとなしい客引きだった。



アレッピーのバススタンド。




バスには窓ガラスがなかった。雨の時は車内の窓枠の上に巻いてある布を降ろすようになっている。



バススタンドを出た後、地域観光振興協議会(DTPC)へ行き、「アレッピーに3時間くらいしかいられないが、何かいい選択肢はないか」と尋ねた。するとやはり個人で船をチャーターできるという答えが帰ってきた。船の写真を見せて「これではどうだ」というが、エンジン付きのかなり大き船だったので、「えっ?」という顔をすると、すぐに小さな手こぎのボートの写真を出してきた。公的な機関だからなのかもしれないが、高い方へ高い方へと誘導しようという感じがまったくなかった。ゆっくり行くのもいいだろうと思い手こぎのボートをお願いすることにした。料金は1時間150ルピー。

すぐに船頭兼ガイドのおじさんが現れ、彼とともに船のところへ行った。



出発。




左側に見える大きな船はハウスボート。寝室・キッチン・トイレなどの設備があり、コックも同乗して食事も用意してくれるということだ。なかにはエアコン付きのものもある。



写真ではよくわからないかもしれないが、ボートの前の方に予備の櫂があり、無性に漕ぎたくなった。アレッピーを出てから1時間くらいたってから、船頭のおじさんに「自分も漕いでいい?」と言って、日よけの前に出て漕がせてもうらうことにした。おじさんも船がよく進むので喜んでいた。

かなり頻繁にハウスボートとすれ違ったり、追い抜かれたりした。そこには、だいたい割とお金をもっていそうな西洋人が乗っていたが、観光客でありながらボートを漕いでいる僕に注目の視線が向けられていた。もの好きな東洋人だなあと思われていたのかもしれない。





何の花だろう?













乗り合いの路線ボートの乗降場。




地元の人たちの日常の生活を垣間見ながら、人力でのんびり行くのは最高!
















運河沿いの雑貨屋でティータイム。お茶はもちろん濃いミルクティー(2人で7ルピー)。船頭のおじさんがお茶を誘ってきたのだが、支払いはやはり僕だった。













エアコン付きのハウスボート。



いつまでも漂っていたいバックウォーターだったが、船頭のおじさん曰く「一番暑い季節」で、そのなかを2時間くらい船を漕いだため、やはり疲れてきた。3時間のツアーにしておいてよかった。

なんとかボロボロにならずにアレッピーの船着場に帰着することができたが、バックウォーターの日差しを甘く見ていた。水の上のせいか意外と暑さは感じなかったが、やはり日差しは強烈だったようで、両腕はかなりの火傷状態になっていた。

2時過ぎ、遅い昼食をとったが、ヴェジタリアン・ミールズが18ルピー。日本円で55円くらい、味は???



ボートを降りた後。画面の少し奥、左岸に屋根付きの小さなボートが見えるが、僕が乗ったのもそんなボート。(今も観光用の手漕ぎのボートはあるのだろうか?-2022年6月追記)




コーチンへ戻るバスの車内。



14時20分ころのバスでアレッピーをあとにした。来る時が36ルピーだったのに、今度はたったの26.5ルピー。バス料金は会社によってだいぶ違うようだ。

1時間20分くらい乗って、見覚えのある街並みになってきた。そろそろエルナクラムだたと思っていると、バスは市街地から離れて、その外縁部を回るように走って行くではないか。10分ほど走ってもバスはいっこうに市街地に入っていこうとしない。これはばずいと思って、車掌に「エルナクラムはまだか」と尋ねると(英語は通じないので「エルナクラム?」の一言だけで「エルナクラムはまだか?」というニュアンスを伝えるという高等技術を用いた)、次のバス停で降ろされた。

同じ場所で下車した若干英語のわかる男性が、通りの向かい側のバス停を指差して、あそこからバスに乗れと教えてくれた。向かい側のバス停は今来た方向へ向かうバス停である。僕の乗ったバスはエルナクラムの中心には行かないバスだったのだ。「チケットを買ったときに教えろよ、車掌」と思ったが、「エルナクラム・バスステーション?」と念を押さなかった自分にも問題があったと反省。

思わぬところで、コーチンの市バスに乗ることになったが、どこに行くのかもわからないまま適当に乗車して、またまた「エルナクラム」と言うしかない悲しさ。しかし、幸い今度のバスは市街地に入っていった。それで、見覚えのあるところで降りようと思ったが、しばらく走っていくと駅・バスステーションへの道しるべが。せいぜい10~20分も歩けば駅かバスステーションに着けるだろうと思ってバスを降りたが、結局、30分以上を要してエルナクラム・ジャンクション駅にたどりついた。

僕は、この夜のエルナクラム・タウン駅からのマドゥライまでのチケットを持っているのだが、ジャンクション駅の方がホテルから近い。ジャンクション駅はタウン駅の次の駅なので、僕の持っているチケットで乗れるには違いないのだろうが、駅の案内で念のため確認してから、オートリキシャーでホテルへ戻った。

5時すぎホテルに着いたが、このころから雨が降り出した。預けていたバックパックを受け取ったあと、ホテルのロビーで1時間半ほど雨宿りをして、雨がやんだところで外へ出て、ホテル近くの中華料理屋に入った。イーグルスの曲が流れるウエスタナイズされた中華料理屋だった。スープとチキン焼きそばで97ルピー。

食後すぐにオートリキシャーでジャンクション駅へ移動。しかし、まだ7時半前である。列車の出発は定刻で23時20分なので、時間が随分ある。ということで、駅前のネットカフェで1時間ほど時間をつぶした。しかし、そのあとは本当に何もすることがなくなってしまい、駅の待合室でひたすら時間をつぶすことにした。



コーチン(エルナクラム)からマドゥライまでの鉄道のチケットはeチケットを購入していった。この画像は予約を確定させることができたことを知らせる画面。冒頭に「congratulation」とあるのが笑える。「おめでとう」といわれるほど鉄道のチケットの入手は難しいのだろうか? でもあっけないほど簡単に予約できた。画面の写っていないところには、自分の名前やパスポートナンバーなどが示されており、これをプリントアウトして持っていき、乗車時に車掌にパスポートとともに見せればよい仕組み。(その後、インドの鉄道のネットでの購入システムは変わっていると思う)



列車は定刻より25分ほど遅れて、23時45分ころ到着した。駅のボードに列車編成が表示されおり、乗車する車両のだいたいの位置は前もってわかる仕組みだったので、めざすAC3段寝台列車はほぼ目の前にとまった。

車掌が降りてくると、ホームで待っていた他の客が車掌のところに近づいていったので、僕もそれにならう。車掌は乗客名簿を持っており、乗客はチケットをみせて照合をうけている。僕もeチケットを見せて名前を確認してもらった。パスポートの提示は要求されなかった。けっこういい加減なものだ。インドらしいというべきところか?

AC(エアコン)車両のなかは予想通りかなりひんやりしていた。インドの冷房は時に効きすぎるのだ。